咲ちゃんと藍ちゃん 高校生になっても中学時代のジャージが手放せ無い。
上の娘(咲(さき)ちゃん)は毎日学校と塾で忙しい。それでいて高校生活を楽しんでい無いわけではないようで、近くの大学の公開講座に参加したり、さる部活の部長をしたり、生徒会活動をしたりと、学園漫画に出てくるようなめまぐるしい学生生活を送っている。本当にうちの子だろうかと疑うこともしばしば(いい意味で)。双子の妹の藍(あい)ちゃんの方といえば、目立つような活動はない。普通の高校に行き普通の運動部に入り日曜日になれば普通に遊びにいく普通の高校生だ。対象的な二人だが、遺伝とは恐ろしいもので、どちらも親子どちらかにどこかしか似ている。しかし、どちらの娘もテレビを分解したりパソコンを修理したりといった私に似た趣味は持っていない。それはどうでもいい。
そんな咲ちゃんだが、先日怪しい動きがあった。別に娘たちの行動を監視するわけではないが、iPhoneのiCloudの機能にFind iPhoneがあるが、この機能を毎日活用している。咲ちゃんは、塾が終わった後、電車に乗って帰ってくる。夜9時を過ぎることは普通で、親の自動車での送迎は欠かせ無い。防犯目的と、駅への迎えの時間を合わせるためにFind iPhone は欠かせ無い機能である。
その日の午後8時ごろ、いつもは塾にいるはずの咲ちゃんが、Find iPhone上では、この地区では年末の恒例となっているイルミネーションの会場にいた。妻と一緒に考えたのは、「誰と?」ということ。藍ちゃんに言わせると友達ではないかということだが、咲ちゃんは、藍ちゃんにもその日イルミネーションを見に行くということは言っていない。ふつうならどこかに行くなら誰かには伝えているはず、特に送迎がある関係上、特別な行動を取る時には必ず誰かには行動を教えあうきまりだ。それが今日は特別な行動をとっている。おかしい。子供の成長を喜ぶべきか、それともどこかの行くなら事前に教えてもらうように伝えるべきか。でも、それを言っちゃったらさも私が娘の行動を監視しているようでは無いか。その日いつもの時間の電車でいつもの感じで帰ってきた。咲ちゃんは何も言わない。自分から自分のことをしゃべるような性格では無いが、親としては何も言わないことがすごく気になる。
次の日、3人で咲ちゃんを塾へ迎えに行くことにする。藍ちゃんの提案である。藍ちゃんもイルミネーションを見たいらしく、どうせだったら咲ちゃんのお迎えを兼ねていけばいいんじゃない?ということになった。咲ちゃんをピックアップをしてイルミネーション会場に向かった。道路は大渋滞。駐車場はどこも空きがなかったため車上から見ることになった。渋滞の分、ゆっくりとイルミネーションを堪能できた。車は大渋滞、歩道もたくさんの人でごった返していた。家族連れも多かったが、やはり多いのはカップルである。今日は土曜日、余計に多い気がする。イルミネーションは綺麗だったが、藍ちゃんの反応とは反対に咲ちゃんの興味は薄い。昨日見に来たよなどの反応を期待したが何もなかった。帰って何も反応が無いのが非常に気になった。外の喧騒とは真逆で車内は変な空気が流れていた。しかし、この変な空気をかき消したのは咲ちゃんの言葉である。
「このイルミネーション見にくるカップルってすぐに別れるらしいよ」
妻の「歩いてるの、カップルばっかりだねえ」という言葉に対する返しがこれであった。これはどう理解すればいいのだろうか。
イルミネーションを見てそのまま街中で食事をして帰る予定だったが、予想以上の混雑ぶりにそのまま家路に着き、家の近くの回転寿司屋で食事をして帰った。そんなに気になるならそれとなく聞いてみようか?という藍ちゃんの提案だったが、やんわりと断った。親からすればとてもセンシティブな問題(?)ではあるが、真面目な咲ちゃんの成長を期待するならば何も聞かずに見守るべきなのではないか。姉妹の中では何かしらのアクションがあるかもしれ無い。同じ青春期であり、二人には二人の世界がある。お互いが知っていることでも親には言わない秘密だってあって当然だ。そっとしてあげるのが親心というものなのだろうか。とてももやもやする2日間だった。いや、問題は解決はしてい無い。今後もこんなことが続くのだろうか。