夫婦とふたごとネコ一匹

家族で起きた事件(?)を基に四コマ漫画を描いています。

修学旅行の談合が決裂した 

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 リニア新幹線の建設工事で、スーパーゼネコン4社が談合をしていた。大事件だ。ゼネコンの談合は昔から行われており、定期的に摘発されるのでもう慣れっこだ。しかし、国費が投入(財政投融資)されている限り許せられるものではない。建設費用の規模が桁違いなわけだから、競争による費用の軽減がないということは、被害を被るのは末端の利用者(客)だ。

 

 20代の頃、旅行会社に勤めていた頃の話。いつだったか、課長と一緒にあるホテルの一室に連れて行かれた。他の旅行会社の社員が数名集まっていた。中高等学校の修学旅行の宿泊費、取り扱い料金などを決定する会議のために集まっていた。その会は「山水会(さんすいかい)」と呼ばれていた。その時に決まった値段は見える形で記録するな、覚えておけといわれたので必死に覚えた。修学旅行の入札の時期は目前に迫っていた。これは談合ってやつだなと思った。かんたんに言うとホテル旅館代の2重価格で利益を上げる。また、取り扱い料金を決まった割合にする。JR代は割引率が決まっているので2重価格にはできない。

 

 その頃は、この会議は旅行会社の存続には必要だと疑いもしなかった。生き残るためである。誰が?自分がだ。旅行会社の利益率など1%程。まともに戦っていてはお互い消耗するだけ。年間の予算(ノルマ)はきびしい。地方の県庁所在地の旅行需要なんて大したことはない。だから、毎年確実に売上と収入が確保できる修学旅行が重要となる。時はバブルが崩壊、社員旅行は縮小され、議員の観光旅行に批判が出始めていた。みるみる市場は小さくなる。生き残るため、業界のため、自分のためである。

 

 おかげで数字(ノルマの達成)が見えた。毎年収入ベースで2000万円がノルマ。3分の1が会社のため、3分の1が他の社員のため、残りの3分の1が自分の給料のためである。2000万でも少ないくらいである。首都圏では5000万とも言われている。市場が違うといえばそうだ。地方では修学旅行ぐらいしか大きな市場は無い。300人の中学校1校で300万円の収入が見える。7校あればノルマクリアだ。数字が見えると心が安らかになる。数字が見えると営業も楽しい。

 

 数字を確実にするためにもうひとつの仕組みがあった。ローテーションといわれる、一つの学校を数社で交代で担当するのだ。これは学校にも相談済み。実は学校でも毎年修学旅行の見積もり選定をするのにとても労力を使う。それも旅行先は中学校であれば東京、北海道方面、高校であれば京都奈良。行程的にも料金的(!)にも変わりはない。それであれば数社で回してもらったほうが業者側も学校側も無用な仕事をしなくても済む。もっともローテーションする学校ばかりではない。ガチンコで見積もり合わせをする学校も多くあった。しかし、半分はローテーションで決まっている。残りの半分を獲得することに注力できる。今では倫理的に禁止されているだろうが、「ノミニケーション」なる呑ませ食わせが常態化していた。旅行中は夜の店、終了してからは反省会と称する宿泊を伴う宴会である。薄利多売の旅行業界でそんなことができるかと疑問に思うだろうが、修学旅行の営業ならそれができたのだ。談合で得た収入は先生方へ還流する。持ちつ持たれつだ。

 

  私がその支店に勤務するずっと以前からそんな状態であった。しかし、そんな業界の談合体質も必ず終わりが来る。私が転勤で違う県の支店へ異動になった数年後、談合は崩壊した。大手4社の談合であるが、取り扱い学校数には違いがあった。一番割を食っていた会社が談合破りをして宿泊代金を規定の料金に改め、取り扱い料金も半分にしてきた。その年は談合破りをした会社の圧勝であった。しかし、特に談合事件として新聞沙汰になることはなかった。一方的に業界の談合が破綻しただけであり、傍目から見れば旅行会社のディスカウント合戦が起きただけなのだから。談合が破綻したことでこの県の修学旅行業界がどうなったかはわからないが、自分にとってはどうでもいいことだ。2つの意味でホッとした。自分がその県の担当では無いということと、修学旅行へ行く予定の生徒の親に無用な費用を出させる必要がなくなったのだから。ちなみに転勤先では修学旅行営業の担当はしなかった。もうたくさんだった。修学旅行も先生たちにも。

 

 私の娘たちの高校の修学旅行がこの秋で無事に終了した。自分の子供の修学旅行に不正はないかじっくりとみてやると決めていたが、いざその時になるとそんなことをしている暇はなかった。そもそもその旅行代金高いか安いかなんて比較対象がなければわからない。談合破りがあった時も、先生たちは単に安い料金の会社を選んだだけであり、談合があったことさえわからなかったかもしれない。現在は、修学旅行中の先生の飲酒や、外での豪遊のような業者との癒着は厳しく断罪されるご時世。もう談合で余分な収入を得る必要はない。今ではいい思い出だ。

 

 最近、その当時、山水会で決めた料金を裏に描いた自分の名刺が出てきた。記録するな、覚えておけといわれたが、自分を守るため残しておいたものだ。だれから守るためだったんだろうか。

 

 No More 談合。いけないよ本当に。

 

 

 あーしまった。上記の事柄は事実無根である。信じてほしい(無理か)。信じてくれなくてもその当時の課長なりリーダーたちは転勤なり退職しているはずである。知っているものはもう誰もいないはず。薮の中だ。

 

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