前に書いた島崎藤村の「破戒」もそうであるが、恩田陸にとって「6番目の小夜子」は彼女のデビュー作である。現在では多作の彼女であるが、デビュー作のこの作が順調に売れたわけではない。1992年に最初の文庫版が発売されるがすぐに絶版になったと、作者による「あとがき」に書いてある。
加筆の上2000年に再度発売されたのが今回読んだ版。なぜ今回「六番目の小夜子」を読もうと思ったか、それは昔、NHKのドラマに鈴木杏、山田孝之、栗山千明以下結構現在でも活躍する俳優が子役時代にでていたのを覚えていたからだった。
ドラマの方は夏休み期間中のお盆の時に再放送したものを1回だけ見ただけであったのでよく覚えていなかったが、山田孝之が中学生の格好をしていて、確か栗山千明も「バトルロワイヤル」に出演した同時期のドラマであったと思う。どういう話か思い出すために読もうと思ったわけだが、とても不思議な話である。ネタバレになるから詳しくは本作を読んでいただきたいが、最初は謎解きの話だと思っていたが、最後はファンタジーになっている。小夜子は誰なのか、小夜子が二人いる理由とか、自己で亡くなった2代目の小夜子は誰だったのかなど疑問は多いなかで現在でいう「氷菓」シリーズのような感じで謎解きがされていくのだと思いっていたが。まあ、デビュー作であるという事からすればこんなものかと思えないでもない。加筆をされているという事でデビューの時の初版と比べればよくなっているはずであるが、小夜子と他のキャラクタとの関係がうまく描かれていたので、かえってファンタジー的な部分がご都合主義と感じさせてしまったのは私としてはちとがっかりである。
しかしながら、それはそれ。恩田陸氏は多作の作家として知られている。別にデビュー作がそうであったとしてもお構いなしであろう。それだけ実力があり流行作家である。これだけの実力のある作家のデビュー作でさえもこれであるという例があれば後進の作家志望の皆々からすれば救いである。恩田陸氏の現在を作り上げたのは不断の努力と多作による量から生まれる質のおかげといえる。
「六番目の小夜子」のドラマDVDを見たいがレンタルDVDはあるだろうか。かなり古い作品である。なにせ17年前の作品。アマゾンではDVDの販売はされている。しかし購入するほどでもない。確認したいのだ。ドラマでは中学校の設定。小説では高校生の設定で恋や受験が絡んでいた。鈴木杏ちゃんはとても可愛い娘であった(現在もそうだけど)。山田孝之も現在のような「ウシジマくん」のような雰囲気は微塵もない子役。栗山千明だけは現在も変わらないような美貌を持っていた。「バトルロワイヤル」や「キルビル」に出ていたのでわかるだろう?
恩田陸氏にとって、「六番目の小夜子」はいわゆる黒歴史に近い作品であると思うが、今後も良い作品をたくさん書いていただきたいと思う。がんばれよ。
なーんてね。