夫婦とふたごとネコ一匹

家族で起きた事件(?)を基に四コマ漫画を描いています。

ソラリスと嘘を愛する女と教団X

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教団Xを読みながら描いた。だれがだれかは自分でも分からない。

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しばらく小説ばかり読んでて絵書いてなかった。

 

この1週間で読んだ本は、

1 ソラリス スタニスワフ レム

2 嘘を愛する女 岡部えつ

3 教団X 中村文則

 

ソラリスは恋愛小説ではない

 

 

 この作品はなぜか映画化が2回行なわれているが、いづれもラブストーリー仕立てになっている。1本目のソ連タルコフスキー版は、原作者が喧嘩別れしたぐらいだから原作に全く沿っておらず、また、2作目のアメリカ版は恋愛偏重でいづれもなんかわからない中で終了している。やはり原作を読まなければ作者の真意はわからないとのことで読み始めたわけだが。

 

ラブストーリーではなく、非人間型エイリアンへの接近遭遇の方法の話

大雑把にあらすじを言うと、主人公であるケルヴィンが惑星ソラリスへ研究者として派遣されることに。このソラリスはもうかなり古くから発見されており、かなりの科学者がああだこうだと研究を続けている。ソラリスの海に横たわる生命と思われるものの研究が主であるが、ケルヴィンもソラリスに到着して早々幻覚(?)に襲われることとなる。今は亡き妻、実はケルヴィンの意識とソラリスの海が作り出した幻影が現れたのだ。ソラリスに常駐している研究者3人(一人は死亡)にもこの幻影は見えている。この幻影の源はなにか?がこの小説の主題だ。原作者が主に言いたかったのは亡き妻への愛ではなく、エイリアン、特に人間型ではない得体の知れない最後の最後でも理解できないエイリアンに遭遇した時に人間はどういう接し方をするのかということだ。小説の最終ページに至ってもその惑星の海を作り出している存在が何なのかは解明されずじまい。主題としてはとても地味であり、研究論文のような記述が随所に出てくる。論文好きの私にとっては楽しい小説であるが、こと映画にするとなると主人公と主人公が作り出した化身とのラブストーリーが主となってしまうのだろうか。

 

タルコフスキー版はどうしてこうなっちゃったのか

 

惑星ソラリス Blu-ray 新装版

惑星ソラリス Blu-ray 新装版

 

 

 映画を見ようと思った理由は、ソラリスの海のイメージや青と赤の太陽が映し出す情景がどのように表現されているのかがイメージできなかったためだ。映画版その1のタルコフスキー版はプロットは原作を踏襲しているわけだがなんだかわからない映画となっている。はっきり言って眠い。眠すぎる。情景が淡々と連なっているだけだ。これはタルコフスキーが意図的に行った撮影スタイルであるとのことだったが眠すぎる。また、なぜか日本の高速道路(東京オリンピック後の日本で撮影)を走る風景が延々と続く描写がある。よく分からない。ちなみに日本で最初に上映された時は、このシーンどころかかなりのカットがあったのを覚えている。数十年前にテレビで観た覚えがある。カットがあったおかげでラブストーリー的な話になったと思っていたがそもそもがラブストーリーだったのだ。ソラリスの海や太陽のことなんて何もわからなかった。「2001年宇宙の旅」もそうだが、よく分からない映画であればあるほど芸術的と思われがちなのはどうしてか。

 

 ちなみにアメリカ版は観ていない。もういい。

 

嘘を愛する女 岡部えつ 
嘘を愛する女 (徳間文庫)

嘘を愛する女 (徳間文庫)

 

 

 記事作成中の段階で絶賛映画放映中の原作である。映画のテレビ宣伝につられて読んだが映画に行くほどではないと思ったが小説を読めば映画も見たくなるのではないかと思って読んだだけである。「愛する人のすべてが嘘だったら」というとてもキャッチーな文句で宣伝を行っている。素性が全くしれない全てが嘘だった男が誰なのかよりもそんな男と7年間も同棲をしていた女の方が気になった。男の嘘が巧妙だったとしても気がつくだろ普通、とおもって気になって気になって一気に3時間ほどでよんでしまった。

 昔「そして父になる」という映画があった。福山雅治演ずる男の子供が病院の子供取り違いのために自分の子ではない子供を育てていて、本当の自分の子供を取り戻すという物語だが、小説版を最初に読んで映画を見に行った。やはり映画になると印象的なシーンは表現上と時間的な制約のために削られる。それでも映画は満足いく作りになっている。主人公が福山雅治が演じていることを差し引いてもである。

 

そして父になる【映画ノベライズ】 (宝島社文庫)

そして父になる【映画ノベライズ】 (宝島社文庫)

 

 

 

 今回の「嘘を愛する女」はどうであろうか。原作を読んだ中では内容、ボリューム的にカットすべきシーンがあるようには感じない。それよりも男の過去をもっと作りこまないとどうして7年も同棲が可能だったのかが見えてこない。もっと突っ込んで言うと、あの理由で男が過去を捨てるというのははっきり言って動機が薄すぎる。それは私が男だからだろうか。女性の立場であれば過去を全く消去したとしても理屈がつくとでも思うのだろうか。そういった意味でこの映画は必見なので時間を見て見に行くつもりだ。これらの疑問をどう解決しているのだろうか。

 

教団Xとセックス描写
教団X (集英社文庫)

教団X (集英社文庫)

 

 

 中村文則の小説は10冊ほど出ているということだが今まで1冊も読んでいない。残念だ。こんなに面白いストーリーを書くのに気がつかなかったなんて。今回読んだ版は、平成29年に出た文庫版である。驚いたのは参考文献の多さ。これほど重厚なストーリーを作るとなるとこれだけの文献を読む必要があったということでそれを裏打ちするかのようなストーリー構成である。2つの教団(というかサークルと秘密組織)との間の関係を通して人間の成り立ちや世界観宇宙観のみならず、世界の貧困問題や世界情勢などが織りなすストーリーは読むのを止めることができないほどだが、性的表現がきつくて閉口。しかしながら登場人物の背景、関係がかなり密接に関係しているので取り除いて読むことはできない。もしもこの描写群がなければただの世界の問題を羅列しただけの論文をまとめただけのツマラナイ作品になっていたことだろう。文字通りそれらの描写はこの作品の根底を支える潤滑油になっているのだ。

 

 映画になったら是非見に行きたいところだが、セックス描写がどうなるかが問題だ。必要不可欠な部分だが、映倫や俳優的に問題がある。まあ何かしら違う表現や設定でクリアできる部分かもしれない。企画が出てきたら是非原作者と協議をして世界観をそのままにクリアしてくれないだろうか。そのほかの世界観はそのままに。